地区防災計画で災害に強いまちづくりを
平成30年12月16日(日)
跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部
地域で津波に備える地区防災計画策定支援検討会委員
鍵屋 一
静岡県ふじのくに
防災士フォローアップ研修
大阪北部地震直後の図書室
真備町避難所 7月15日
祝!男鹿のナマハゲら来訪神ユネスコ 無形文化遺産!2018年11月29日
ナマハゲによる災害時支援
■ナマハゲ(支援者)による各戸訪問
●避難場所(神社)を日頃から使う
●避難場所までの参道を整備
●確実な避難方法(同行避難)
■担当する地域の要配慮者情報を収集(ナマハゲ台帳)
大津浪記念碑
「高き住居は児孫の和楽、想へ惨禍の
大津浪、此処より下に家を建てるな」
岩手県宮古市重茂姉吉地区
昭和三陸地震(昭和8年)の津波被害の教訓
を刻んだ石碑
出典:平成27年防災白書
安政大津波の碑(大阪市浪速区HP)拙文にて記し置。願くハ、心あらん人、年々文字よミ安きやう墨を入給ふへし。毎年、8 月の地蔵盆には、津波碑を洗い、文字が読みやすいように「墨入れ」を行い、地域の人々が集まって供養が行われている。
死 者: 19,575名
行方不明: 2,577名 (消防庁:H29.9.1)
平成23年3月11日 東日本大震災計:22, 152 名
釜石市鵜住居地区
鵜住居地区
両石地区東京大学大学院
片田敏孝教授提供
避難者:154,782名 震災関連死:3,674名:復興庁.H29.9
誰が逃げろと伝えたか?
・第1位 101人 家族・同居者・第2位 97人 近所、友人・第3位 74人 福祉関係者・第4位 30人 警察・消防(団を含む)内閣府「避難に関する総合的対策の推進に関する実態調査結果報告書」(東日本大震災時、315人、複数回答あり)2013年
誰が逃げるのを支援したか?
・第1位 85人 家族・同居者・第2位 60人 近所、友人・第3位 53人 福祉関係者・第4位 11人 消防・消防団内閣府「避難に関する総合的対策の推進に関する実態調査結果報告書」(東日本大震災時、315人、複数回答あり)2013年
⇒近所・友人と福祉関係者の支援力が強い!
東日本大震災 死者の教訓○高齢者が約6割、障がい者死亡率は2倍・体力がない、地域とのつながりが弱い
⇒近所や福祉とのつながりが大切
○自治体職員221名、消防団員254名(H25.9.9NHKオンライン)民生委員56名。福祉施設職員86名(H23.12.13河北新報社)
・守り手、支援者の危機管理能力が弱い
⇒人・組織の危機管理能力向上が必要○3, 674名の震災関連死(H27.12復興庁)・95%が66歳以上、移動や避難所で衰弱
⇒福祉防災計画が必要!
防災の正四面体自助
(減災対策、家族情報、持ち出し品)
(新たな)共助
(ボランティア、NPO、企業など)→協定
近助(従来からの共助)
(近所、福祉、消防団、自主防災会
など)
→コミュニティ活動・防災訓練公助
行政(国、自治体、警察、消防、自衛隊)、病院、学校など)→防災計画、BCP、広域連携
高齢化がどんどん進む!
単身世帯がどんどん増える!出典:朝日新聞デジタル:15年までの実績値は総務省『国勢調査』(各年版)。15年以降
の推計値は国立社会保障・人口問題研究所編『日本の世帯数の将来推計(全国推計) 2013年
近所づきあいは減っている!出典:平成19年版国民生活白書
減り続ける消防団員数!出典:総務省消防庁HP
福祉事業者も不十分だ!福祉施設の事業継続計画(BCP)の現状2013年8月:内閣府「特定分野における事業継続計画の実態調査」(579施設)
◼BCPを策定済み 4.5%
◼BCP策定中 6.9%
◼BCP検討中 18.3%
◼BCP策定の予定なし 29.2%
◼BCPを知らない 40.9%
公助にも限界が・・・減り続ける自治体職員!
出典:総務省HP
平成26年度 地区防災計画制度施行
•地区防災計画
は「近助」の
強化を主目的
⇒近助が強くなれば、自助も新たな共助も公助も強くなる!
近助と公助の役割分担
公助1:リスクを科学的に把握する公助2:避難所を指定する公助3:避難勧告等を放送近助1:安否確認する近助2:避難誘導する近助3:避難所等で支え合う
地区防災計画とは?〇市区町村内の地区住民及び事業者が行う自発的な防災活動計画
〇住民と企業、NPO、ボランティア、学校、医療・福祉施設などの連携
〇市区町村への計画提案で公的な性格
➡市民の命を守る
「近助の計画」
子ども
市区町村
自治会+地域関係者+専門家
保護者
家族防災会議=自助の計画
地区防災計画=近助の計画
地域防災計画=公助の計画
地区防災計画がつなぐ自助・公助
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大槌町安渡地区
安渡地区は東日本大震災で1943人中、218人が犠牲となった。
平成24年4月、3つの町内会を一つに統合し、安渡町内会防災計画づくり検討会を設置し、全11回の検討会、報告会、住民懇談会、住民意向調査を経て平成25年10月地区防災計画を作成した。
・2011.10月一避難行動等のヒアリングの実施・2012.6月-「検討会」の設置と熱心な議論(計画策定まで11回開催、1回あたり3~4時間)・2012.9月生存者296人への避難行動等のアンケート実施・2013.1-2月「安渡地区死亡状況調査」の実施(ヒアリング 22人、犠牲者203人)・2013.10月「安渡地区津波防災計画」の発刊・2013.8月-「安渡町内会・大槌町懇談会」の開催と地域防災活動の制度化(途中)・2014.3月2日町との「合同防災訓練・検証会議」の開催→町と連携、計画の検証、要援護者支援の検討など
地区防災計画策定等の経緯
・支援の内容を限定する(安全な避難場所に向かって、率先避難、声かけ、避難所運営等)
・予め登録している(―定の自助活動を行っている)要援護者を対象とする
・要援護者の家族は、移動に必要な準備や避難訓練に参加する
・地震時に、家族は要援護者を玄関先まで出す
・車避難は、要援護者との同伴避難に認める
安渡版 避難行動のルール
・自分たちのためではない志(自分たちは、経験したから次の津波では助かるだろう)
・新しく地区に引っ越してきた人たち、これからの世代が生き残るために、ここまで考え、議論した経過を見せることが大事だ
・一度決めたことでも、誰かが問題があると言えば、何度でも、どんなに時間がかかろうと見直す
・この計画を、新しいコミュニティ再生の契機としたい! 安渡町内会長 佐々木慶一氏
なぜ、ここまでやるか
下知は何をしたのか(1)住民が地区防災計画で、世界で初めて事前復興計画に取り組んでみたら・・・
⇒災害後に弱くなりがちな「人の復興」を中心に検討、計画化した!
復興の7要素(出典:「復興の教科書」)
東日本大震災岩手県被災市町村の
復興計画の概要 佐藤ら(2013)1)主要な復興施策
①災害につよいまちづくり
②くらし・生活の再建
③産業(農林業・水産業・商業)の再生・振興
2)まちづくりの主要な要素は、津波からいのち
を守るハード対策が中心的だったほか、農業、漁業・水産加工業、産業といった「職」の場を規定するものが多かった。
⇒復興7要素のうち、「人と人とのつながり」「こころとからだ」など「人」の要素が弱い
下知地区事前復興計画の基本コンセプト
「伸び伸び遊ぶ子どもたちを中心に、地域のつながりで、楽しく安心して暮らせる、災害に「も」強いまち下知」
⇒「人」のつながりが中心!
下知地区事前復興計画の5本柱
1)子ども
2)高齢者・障がい者
3)働く世代
4)災害に強いまち
5)コミュニティ
⇒住民が「まちの復興」より「人の復興」を重視!
下知は何をしたのか(2)地区防災計画の作成を地域住民主体でワークショップにより行うことで
⇒地域の防災力向上
⇒コミュニティ力向上
地区防災計画への取組はコミュニティ力「も」高める!
• 下知地区コミュニティの復興方針
「地域活動が盛んで、名前で呼びあえるまち」
⇒高齢者や障がい者等が平時も、災害時も安心安全
市原は何をしたのかいちはら防災100人会議地区防災計画のひな型を地域住民主体でワークショップで行う
⇒地域性を反映したひな型づくり
⇒全市展開への起点
一人暮らし、車いすの高齢者を守るために、災害前にしておくこと平成30年2月3日 第1回ワークショップの「いいね」数
水害時に自らの避難や要配慮者の安否確認、避難支援のために重要なこと
平成30年2月17日 第2回ワークショップの「いいね」数
0 50 100 150 200 250
情報収集手段の確保
災害リスクの把握
防災訓練
コミュニケーションの確保
要配慮者支援体制の確保
避難場所・経路等の確保
リーダーの確保
判断力の確保
防災用品の確保
安否確認体制の確保
家庭内備蓄
災害経験の活用
12
34
56
78
9101112
第3回の避難生活WSの結果②
類型化すると1位 258いいね!「地域とのコミュニケーション」・農家、生産者及び学校との交流、地域防災会議の開催、町会への加入、自治会同士の連携など
2位 142いいね 「訓練」3位 131いいね 「特技等の活用」4位 125いいね 「要支援者情報の共有」5位 113いいね 「医療器具等の確保」
第4回の事前復興WSの結果②類型化すると高齢者・障がい者等1位 87いいね!「支援体制の構築」
稼働世帯 1位 86いいね!「復興体制の構築」
こども 1位 136いいね!「心のケアの体制・環境確保」
第5回の自助WSの結果②類型化すると1位 防災教育・講習会
144いいね!2位 回覧板等の活用
139いいね!3位 自助リストの配布
87いいね!4位 炊き出し訓練
74いいね!
第6回WSいちはらベスト10決定!
自助、避難、避難生活、事前復興の点数を合計して、全体の順位をつけます。
⇒現時点での「集合知」⇒「地区防災計画作成の手引き」に反映
いちはらベスト10!(1)いちはら防災100人会議
現時点での「集合知」①心のケア体制・環境の確保②情報収集手段の確保③防災教育・講習会④地域のコミュニケーション⑤特技等の活用
いちはらベスト10!(2)いちはら防災100人会議
現時点での「集合知」⑤復興支援体制の構築⑦自助リストの配布⑧復興体制の確保(市民)⑨要支援者情報の共有⑩地域の災害リスクの把握⇒知識・行動、組織、良い道具
いちはら地区防災計画の手引きいちはら防災100人会議
地区防災計画の概要①自助を高める取り組み
②要配慮者支援を中心とする共助の推進(安否確認、避難、避難誘導、避難生活)
③災害後の世代ごとの生活再建コンセプト④運用と管理
地区防災力向上のためには?
▪地区防災計画作成⇒地区の避難、避難生活、地域・行政連携、教育・訓練、運用管理しかし、計画だけでは不十分!
▪災害時に最適な判断、行動ができる人間力向上▪災害時に支え合えるコミュニティ力向上
ワークショップは地区防災計画づくり、コミュニティづくりに有効だ!いちはら防災100人会議アンケート結果より
地区防災計画策定の順序
1 魂を入れる(心。仲間づくり)2 仏を作る(形。計画、モノの確保)3 仏を磨く
(継続。訓練・見直し)
地区防災マネジメントのプロセス
1 リスクを知り対象災害を決める2 地区の備えを知る(まち、施設、防災計画・訓練、人の意識・・)
3 ワークショップで意欲を高め、集合知をつくって計画化
4 計画、実行、検証、見直しのシステムを作り、拡充、改善を継続的に実行する
1.避難所の組織体制と応援体制の整備
2.避難所運営の手引(マニュアル)の作成
3.避難所の指定と周知
4.避難所における備蓄
5.訓練、連携作り等
避難所のライフサイクル
(平常時)
避難所のライフサイクル(発災後)
1.避難所設置、開設、体制
2.避難所リスト及び避難者名簿の作成
3.住民主体で学校等施設管理者、行政の協力とボランティアによる支援
⇒飲食・必要物資の確保、生活支援、衛生・巡回診療・保健、情報提供、相談、防火・防犯対策、生活再建支援等
4.避難所集約、閉鎖
東日本大震災被災者の声
☆仮設トイレが少なくて、何十人も後ろにならんでいるから、出るものも出なくて・・・・10日以上便秘が続いて本当に苦し
かった。
避難所あるある①【課題】いつも行政・施設職員やボランティアばかりトイレ掃除をしている。
⇒【方向性】避難所内でトイレ係を決め、当番制にしてトイレ掃除に取り組む。
⇒【現実対応】
・どうやってトイレ係を決める?
・これまでトイレ掃除をしてくれていた人たちに、次は何をしてもらう?
避難所あるある②【課題】避難所を運営しているリーダーが男性ばかり。女性用物資を男性が配布している。
⇒【方向性】運営者の中に女性を入れる。また、女性専用スペースを設ける。
⇒【現実対応】
・女性を運営者にいれるように、どうやって男性リーダーに理解を求める?
・運営者の女性にはどんな役割を担ってもらうといい?
避難所あるある③【課題】防犯対策ができておらず、女性が不安を感じている。
⇒【方向性】安全管理(ハラスメント予防のための間仕切りや、配置の工夫、照明設置、暴力のSOSカード・チラシの設置など)を行う。
⇒【現実対応】
・どのような間仕切りを設置する?選んだ間仕切りの短所はなんだろう?
・SOSカード・チラシはどこに設置おく?
避難所あるある④【課題】ペットと一緒に避難してきた人が居住スペースにいる。
⇒【方向性】早い段階で避難所内に別で暮らせるようにする。
⇒【現実対応】
・ペット専用スペースをオープンするまで、避難所のどこにいてもらう?
・ペットがいない人に、ペットとの共同生活をどう理解してもらう?
避難所での支援
1.トイレに行きやすくする!
⇒スロープ、障がい者トイレ、洋式トイレ、誘導者
2.要配慮者への支援
3.必要な物資を調達する
4.心のケア(ペットを含む)
5.受援力(お互いさま)
避難所運営を行政職員に
任せ続けると?1.自立の意欲が弱くなる!
⇒生活不活発病、要介護になりやすい。支援慣れをして元の生活に戻りにくい。
2.復旧・復興が遅れる!
⇒見舞金・義援金の配布、り災証明、仮設住宅など行政にしかできない仕事が遅れる。
防災士会の活動理念
会員は居住する地域の自主防等の活動に参画し、防災計画の策定、実施等につき指導的役割を果たすことによって、防災協働社会の構築に貢献すること。
上から目線の人の特徴
〇上から目線とは対等・あるいは自分より下の立場にいるはずなのに、相手の発言が上から物を言っているように聞こえるときに使う
・人にアドバイスをしたがる・相手にダメ出しをしたがる・プライドが高い・上の立場のようにふるまう
地域(近助)の役割
「こころ」の支援!・心配され、気遣われるのがうれしい。
・モノや手伝いは心を伝える手段。
・「こころ」の支援なら誰でもできる。
・役に立たない人はいない。
◎要配慮者こそ、すぐれた「こころ」の支援者になる。
災害に「も」強い地域とは何か?
参画意欲
自主防災組織「数」に「参画意欲」を加えた
二次元発想
・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
市民と取り組む共助の防災
東海大学 河井孝仁教授資料を鍵屋修正
災害に「も」弱い地域のイメージ
・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
要求するばかりで、自ら動こうとしない市民等
参画意欲
市民と取り組む共助の防災
災害に「も」強い地域のイメージ
参画意欲
・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
市民、NPO、企業の参画意欲の増加
市民と取り組む共助の防災
災害に「も」もっと強い地域のイメージ
参画意欲
・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
交流住民も含めて参画意欲の増加
市民と取り組む共助の防災
災害に「も」もっともっと強い地域のイメージ
・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
域外住民 ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・
専門性も加えた参画の増加
多様な専門家と連携
参画・関与意欲
市民と取り組む共助の事前復興
孤独なボウリングR・パットナム(米国政治学会元会長)
ボウリングする人の数は減っていないが、みんなでする人は減り、一人が増えた!◎アメリカの組織社会への参加率以前のアメリカは市民の「つながり」が強かった。そのつながりが幸福な暮らしと民主主義を支えてきた。1960年頃は30%⇒2000年頃は10%⇒治安が悪化し、格差が大きくなり、社会の効率が悪くなった
決め手は「ご近所力」①
◎社会関係資本 Social Capital人や地域のつながり=信頼の絆=ご近所力
社会関係資本は、人々を賢く、健康で、安全で、豊かにし、公正で安定した民主主義を可能とする。
※「ご近所力」は付加的価値ではない※「ご近所力」こそが、安心安全の源泉
決め手は「ご近所力」②
◎ご近所=コミュニティには2つの意味① 地縁的・財産管理的な組織・自治会・町内会、学校区組織、マンション管理組合
② 共通の目的・価値で活動する組織・消防団、PTA、商店街、地域ボランティア・NPO・・・
地区防災計画は、①②を縦横斜めに連結し、地域全体の防災力とコミュニティ力、個人の幸福感を高める
人生を幸せにするのは何?ロバート・ウォールディンガー「心理学者、ハーバード成人発達研究4代目リーダー」 最も長期に渡る幸福の研
究から 出典:TED.com(2016年2月2日)
・75年間724人の男性を追跡し 休むことなく 仕事や家庭生活健康などを記録
・1番目のグループはハーバード大学の2年生・2番目のグループは極貧環境で育った少年達
人を健康で幸福にするのは良い○○○○に尽きる
これからの防災は?損失を減らす防災から、
「魅力増進型」の防災へ
日常から人間関係、近所関係を良好にし、だれもが排除されない魅力ある地域を作ることが、災害や危機にも強くなる!
◎魅力増進への継続的取り組み◎質の低下を最小に、早期に復旧復興を進める
⇒両方を実現する防災・BCへの取組み
今日を愛し、明日に備える
魅力増進型防災の概念
事故・災害
復旧
復興
古の善く勝つものは、勝つべくして勝つものなり善く戦いて勝つや、勇功なく智名なし
孫 子